誰も読んでくれないかも知れない、だけどやってみる価値はある ~「カクヨム」挑戦記(1)~

WEB小説エッセイ

「カクヨム」ならまだ何とかなる、と考えて

 元々僕は、小規模ながら参加者のレベルが高いことで有名だった、ある投稿サイトで活動していました。商業出版水準を目指さない人は去れ、くらいの厳しさがあるサイトで、そこから公募新人賞を目指した人、実際受賞した人も多いと思います(某N木賞作家まで出ている)。

 しかし、大規模サイトから(≒「なろう」)の書籍化、という新たなルートが段々メジャーになって来て、かつてはたくさんあったそのような小規模な小説投稿サイトのような場所は、結局ほとんどが寂れて消滅状態になってしまいました。

 僕も、どうしたものかと悩みながら、そのサイトでの投稿を続けていたのですが、ついにはほとんど投稿者が誰もいなくなってしまったことから、数年前に思い切って「カクヨム」に参加することにしました。

 非・ラノベの一般小説を大手Web小説サイトで投稿しても反応は少ない、というのはあちこち読んで回っていたので分かっていましたが、少なくとも「カクヨム」なら、SF作品であれば受け入れてもらえる余地がありそうだ、と思ったからです(現在ではかなり状況も変わってしまい、SFの書き手も少なくなりましたが)。

そもそもweb小説は、「誰にも読んでもらえない」のが基本

 一般小説は読まれない、と繰り返し書いておいてなんですが、実はラノベにしても、その大半はほとんど読まれずに終わる、というのがWeb小説の実情です。
 たくさん読まれた成功作ばかりがランキングに上がって来るので勘違いしがちですが、連載作品の5話目くらいからPVが一桁とか、ついにはゼロが並ぶとか、そんなのはざらにあることです。

 そこで僕がまず最初に考えたのは、比較的読まれやすそうな数枚程度(3000字前後)の掌編SFの投稿から始めよう、ということでした。
 しかしそれでも恐らくは、投稿第一作はほぼ誰にも読まれないだろうと予想していました。
 以前のサイトで一緒に活動していた人に呼び掛けて、みんなで一斉に参加したりすればまた別なのでしょうが、まずは完全に自分一人の力で新しい場所に切り込んでみよう、そう思ったからでした。

ビギナーズラックだった、カクヨム参加第一作

 投稿用の作品を準備している段階で、同一世界観を舞台とした連作SF掌編というのをやってみたら面白いのではないか、とふと思いつきました。
 何話か構想を考えてみましたが、これなら10話以上書けそうだということで、まずは先行作として「支線の先のメトロポリス」という3000字ほどの掌編SFを、「カクヨム」参加第一作を投稿してみました。どの程度反応がいただけそうか、挑戦してみようと思ったのです。

 ところがこの作品が、予想をはるかに上回って読んでいただけました。
 投稿直後から「★」をいただき、さらには夢のまた夢くらいに思っていたレビューコメントをいくつもいただき(後に分かりましたが、実力のある書き手さまからのレビューコメントばかりでした)、ジャンル別の週間ランキングにもあっさり入りました。
 非常にラッキーな、スタートを切れたわけです。

 これなら行けそうだ、ということで、引き続きSF掌編シリーズの連載を開始しました。これが、今でも「カクヨム」での代表作となっている「メトロポリタン・ストーリーズ」でした。
 第一話の反応は良く、やはりこれならいけそうだと自信を深めることになりました。

 ところが、これがとんでもない勘違いで、ここから苦難の日々が始まることになってしまいました。
 大手サイトでの孤独というものの恐ろしさを、思い知らされることになってしまったのです。

(次回へ続く)

カクヨム挑戦記

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