本屋さんにあるような小説が無料で読める、ネット小説(Web小説)という世界があるのです、実は ――今さらながらの基本解説

WEB小説エッセイ
 懐かしの、京都四条通のジュンク堂書店。ずいぶんたくさんの本を買いました。

■ 本当に、今さらながらのお話ですが。そもそも「一般小説」って

 機会があって、最近改めて気付いたことなのですが、そもそもネット小説サイトというものの存在を知らない、これがむしろ一般社会のスタンダードなのかもしれません。
 確かに「なろう」「カクヨム」「ノベルアップ+」などと聞いても、何のことか全く分からないというのが(京阪電車に広告出したりしてますけどね、「なろう」とか)普通なのでしょう。

「一般小説(一般文芸)」などという呼び方も、「ライトノベル」(この呼び方に固まるまでも、様々な変遷がありましたが)が出てきたことによって広がったもので、「携帯電話」の登場で「固定電話」という言葉が生まれたような、いわゆる「レトロニム」の一種と考えて良いのでしょう。

 僕の個人的な交友範囲は、みんないわゆるガチのオタクではないものの、年齢の割にはそちらの方面もある程度は分かる、という人たちが多く(若い時に「銀英伝」とか「ロードス島」にはまっていた、という感じの人が多い)、「ラノベ」も普通に通じますが、普通に紀伊国屋書店(例えば)で平積みの新刊を見ているような人の多くは、「文庫コーナーに置かれているコミックっぽい本」が何なのか、考えたこともないかも知れません、もしかすると。

 ■ 読者の広がりに限界のあるWeb小説サイト

  そのような、「普通の小説好き」――月に何冊か、ハードカバーあるいは新潮文庫とか講談社文庫を買って(個人的には河出文庫なんか好きですが)通勤の電車で読んでいるような人たちが、「なろう」や「カクヨム」などをどのように認識しているのか。

 僕も調査した訳ではないので、正確に把握することなどもちろん出来ませんが、恐らくはサイトを訪れて読みたい作品を探す、という行為をしたことのある人は少ないと思われます。
 何かの機会でクリックしてトップページにたどり着いたとしても、アニメ系のかわいいイラストが並ぶのを見て「ここは自分には関係ないな」と思ってすぐに立ち去る、恐らくはそんな感じではないでしょうか。

「ステキブンゲイ」の運営さんなどは、その辺りを打破しようとして頑張っているのだと思いますが、まだまだこれからというところでしょう。本気でやろうとすれば、資本力と、大量の人材(編集者)が必要となる一大事業なのです。

 ■ しかし、実は良作もかなり多い、ネット上の「普通の小説」 

 従って、「一般小説」の書き手は、結局「公募勢」として、「普通の文学新人賞」を取ることを目指します。そうして出版化されて、書店の普通の小説コーナーにたどり着くことが出来なければ、相対的にごく少数の読者しか得られないのが現実だからです。

 しかし、これはこれでかなり熾烈な世界です。僕も公募勢の一員でもあるから分かりますが、そうそう受賞することなどできません。上位コンマ数%まで入らなければ、お話にならないレベルの難易度だからです。

 そういうわけで、「マイナージャンル」の書き手として、大手サイトの軒下で自作を並べるというのが、相対的に最も多くの読者を得ることが出来る手段となる――繰り返し、このエッセイでも書いて来た通りです。
 しかし、長年さまざまな投稿サイトを見て来た僕としては、商業出版レベルにある一般小説の書き手が、あちこちに何人も埋もれているのを知っています。もったいないなあと思わずにはいられません。

 ■ 両極端なこの状況、もう少し何とかならないのかな

 いわゆる一般社会の小説好きにとっては、(例えば)紀伊国屋で平積みされている小説以外はほぼ眼中にも無く、逆にネット上においては、ラノベにあらざれば人にあらずとでもいう状況で、何ともひどいバランスというか、もうちょっと何とかならんかねと思わずにはいられません。

 僕は実はあまり読みませんが、書店では一番人気のジャンルと言って良いだろうミステリーが、ネット上では下位の不人気ジャンルというのもなかなか不思議な状況です。

 若い世代ほど、両方の世界をまたがって知っている人は多いのだろうとは思いますが、「一般小説」の書き手としては、もうちょっと「普通の人たち」が、ネット上に自分たちでも楽しんで読める小説が存在するということを知ってくれてもいいような気もします。
 
 当ブログにおいても、微力もいいところながら、「普通の人たち」が読めるネット上の小説を紹介していく試みを、少しやってみてもいいかなと思っています。

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